甘露煮の名月

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ある新月の夜だった。
戸を叩く音に呼ばれて玄関へ出向くと、戸口に二匹のうさぎが立っていた。
「わたくし、お月様のお側仕えをしております、うさぎと申します」
恭しく言うと、うさぎたちは深々と頭を下げる。
「申しあげにくいのですが、お庭の栗を、少々わけていただけないかと思いまして…」
うさぎたちが言うには、中秋の名月を前に、主である月の光が弱くなっているらしい。なんでも黄色いものを食べれば、それが解消されるのだとか。
にわかには信じられない話であったが、うさぎの困り果てた様子に同情した俺は、栗を分けてやることにした。
「妻が煮た栗だが、少しばかり焦がしちまってな。それでもよけりゃ、持ってきな」
俺が栗を渡してやると、うさぎたちは何度も頭を下げて、去っていった。


「今年のお月さんは、いちだんと明るいわねえ」
中秋の名月を見上げながら嬉しそうに言う妻に、左下に見える焦げの話はしないでおいた。
ファンタジー
公開:18/10/31 20:53
スクー 月に代わって栗拾い

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