念力年賀状

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正月元旦、郵便受けに一枚の年賀状が届いた。表も裏も真っ白で、差出人の名もなければ、干支の羊も新年の挨拶もない。ところが郵便局員には、宛名も郵便番号もはっきり読めたという。
受け取った俺は首をかしげた。白紙の賀状を日に透かし、裏返し、しまいには虫眼鏡まで持ち出したが、何も見えない。ところが夕刻、突然、頭の中に声が響いた。
明けましておめでとう。今年こそお前に貸した十万円を返してくれたまえ。君の元友人より。
受取人の俺は飛び上がった。十年前、確かに彼から金を借りたまま、転勤等で音信を絶っていたのだ。
しかも、彼の筆跡まで脳裏に浮かんで来た。
翌日、俺は十万円を工面し彼の家を訪ねた。彼は白紙の年賀状を一枚差し出し、にやりと笑った。
便利だろう。念力で書いたんだ。住所も名前も挨拶も省略したが、言いたいことは全て届いたようだね。
俺は深々と頭を下げた。白紙の賀状ほど、胸にこたえる年賀状はなかった。
ミステリー・推理
公開:26/10/12 10:12

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