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人間たちが寝静まった頃――街の路地裏で、影による影のための影市場が開く。
墨黒の提灯と同色の簡素な台が並んだだけの市だが、売買する者が大勢訪れるため、毎晩のように賑わっている。
わたしはリナの影。今夜は売り手として店を開けた。寸刻も待たずに一番客がやってきた。
「ごきげんよう、オススメは?」
「『不機嫌』です」
客は大笑いして、わたしが並べたガラス壜をひとつ手に取った。なかには烏の濡れ羽色の靄が不穏に漂っている。リナが醸し出した不機嫌を彼女が寝てる間に抽出したものだ。
「買うよ。いくら?」
「5シャドウです」
強気な値段を告げたのは、あと少しで『ご機嫌』が買えるから。彼氏と喧嘩してずっと不機嫌なリナに、プレゼントしたいのである。
「予算オーバーだけど、まぁいいか」
「毎度ありがとうございます!」
チップまでくれた客は、「これで主人を困らせてやるんだ」と言いながらキヒヒと笑って雑踏に消えた。
ファンタジー
公開:26/05/01 21:35
更新:26/05/02 10:17

いちいおと

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintやAIで作成しています。

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