人見知りのまねき猫

ウチのまねき猫は人見知りのため、誰かが店の前を通ると、ぴょこっと柱の陰に隠れてしまう。
それでも、かろうじて見えている手をひょいひょいっと動かして招いているので、そのままにしていた。
しかし中には意地悪な人もいて、隠れている猫を見ようと柱の裏側をのぞき込む。
それに合わせて猫もジリジリと柱の周りを移動する。
移動しながらも手はひょいひょいと招いているので、ある日勢いよく柱にぶつけてしまった。
ぶつけた手は見る見るうちに腫れて膨れ上がり、熊手のようになってしまった。

こ、これは。
便利かもしれない。

それからは、ひょいと手を招くついでに店の前のごみをかき集めてもらっている。

熊手の招き猫がいるという評判は遠くの町まで駆け巡った。物珍しさに人が集まる。
ただ、招かれる人は多くなったけれど、猫を見たら帰ってしまう。
店の繁盛具合は変わらない。

まあ、猫の人見知りが治ったから良しとするか。