影の暗躍

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拙者は卑しい下級武士の出であったが、殿の影として仕えることとなった。殿に顔立ちや背格好が似ているという理由から異例の抜擢を受けたのだ。
しかし、にわかに大失態。ある夜、本物の殿は寝床を敵に襲われ殺されたのだ。本来死ぬのは拙者であった筈。誠に面目次第もない。

腹を切って詫びようとした時、家臣たちが止めに入った。
「其方が死んで何になるか。敵が殿の死を知れば、即刻攻め込まれ国は滅ぶであろう。ならば其方には今より殿になって頂くのが一番良い策ではないかと。敵には身代わりが殺されたと噂を流せば事は済む」
「否、否、拙者に殿の役などつとまるはずが…」
「心配ござらぬ。実のところ、殿はとうに死んでおります。此度死んだ者も影だったのです」
「これはしたり!」

そうして、拙者は国を守るため殿様として家臣に支えられ、殺されることなく天寿を全うした。なぜなら自身には優秀な影武者をつけたから。
その他
公開:22/09/10 20:01
更新:22/09/10 20:16

ナユセナユ

どんでん返しが好き。ちょっとずつ書いていきたいです。

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