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黒板を消す担任の背中。
「聞いた者もいると思うが実はもう卒業後の進路が決まった者がいる。鈴木、自分で言えるか」
教室が静まる。恐らく美保は私にしか話していない。
美保は立ち上がる。
「あの…人間に生まれて18年。短いのかもしれないけど残りは蝶として生きてゆくことに決めました」
教室がどよめく。私は涙を堪え切れない。
「先生から一言。人生には進学や就職、人によっちゃ転職といった様々な旧式進路がある。
しかし鈴木は新式進路の『転変態』を選んだ。
肝心なのは自分で決める事だと思う。先生は鈴木の決断を尊重したい」
「春の羽化に合わせる為に来週から蛹になります」
まっすぐな声。決意の固さが見える。
「待てよ!人間にはもう戻れねえんだぞ。いいのかよ」
クラス一お調子者の山田がいつになく真顔だ。

親友の現実に視界が揺らぐ。
「幸せって何だろう。正解って何だろう」心の中で疼く黒い塊。
私は決断が…怖い…
ホラー
公開:22/01/07 11:28
更新:22/01/07 12:34

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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