罪つくりな歯磨き粉

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その商品『歯浮き歯磨き』が発売されても、世間は無関心だった。
歯の浮く台詞が平然と吐けるようになるのだが、限られた用途の上に高いのでよほどの物好きしか買わなかった。
そこに目をつけたのが詐欺の集団だ。この歯磨きを使って高齢者を籠絡し、資産を騙し取る手口が横行。様々な警告をよそに被害は増える一方だった。

「奥様のような方にお会いできるなんて、僕は神に導かれてるんですね」
「まあ、そうかい?」
「そんな優しく微笑まれたら、つい母を思い出しますよ。僕は早くに母を亡くして…」
「おお気の毒に。それでどこか寂しげなんだね」
「え?」
「判ってたよ。明るくふるまう陰で目の端に漂う哀しみが…」
「あ、あの…」
ついに男は諦めて帰っていった。

「あたしはね、あの歯磨きと一緒に特別品の『リップサービススティック』を使ってるのさ。悪いねえ」
老婦人はそう呟くと、おもむろに電話の受話器を取り上げた。
その他
公開:20/12/22 18:01
更新:20/12/22 22:04
シャンプーリセット症候群 ボディソープ・パラドックス に続く連作 最終回は水素カフェさんご提案の 「歯磨き粉」で書きました 皆様、たくさんのアイディアを ありがとうございました #103

秋田柴子

2019年11月より、SSGの庭師となりました。
現在SSから長編まで幅広く書いております。

【活動歴】
・東京新聞300文字小説 優秀賞1回 入選2回
・SSG 空想競技コンテスト 入賞
・『第二回日本おいしい小説大賞』最終候補(小学館)
・SSマガジン『ベリショーズ vol.5,6,7,light』掲載(Kindle無料配信中)
https://www.amazon.co.jp/dp/B096821HSW

【近況】
 いろいろ書いてます(笑)

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