桜子

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桜子は物静かな生徒だった。そして率先して人を助け人の嫌がる仕事を引き受けた。
怪我をした生徒を背負って走り保健室まで連れていった。
苛められている生徒を見事な間合いでその場から引き離した。
皆が遠巻きに見る真冬のバケツの氷水のごとき水に手をつけ雑巾を絞った。

上品な笑顔を忘れない。
振る舞いの清さに級友たちが影響を受けていった。

卒業の日。
桜子に助けてもらってばかりだった。皆で桜子を胴上げしよう。
級友らが桜子を抱えようとした瞬間、一斉に笑顔が消えた。
桜子。。君は。。アンドロイドだったのか。
模範生アンドロイドを教育現場に試験導入するとは聞いていたが彼女がそうだったのか。
桜子が初めてわがままを言った。
「胴上げして」
皆が、せーの、と胴上げをした。
高らかに舞いながら桜子は自分が人間だったらどんなにいいだろうと思った。
泣きたかったが笑顔の表情しかプログラミングされていなかった。
青春
公開:20/12/11 09:35
更新:20/12/11 09:40

MIKI( インドネシア )

インドネシア暮らし

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