赤い糸

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赤い糸がひらひら泳いでいたのでその糸を取り、手繰って先へ先へと進んでいく。
手応えによって時には手繰り寄せる。加減を変えながら糸の先を追い求めた。

赤い糸は夢の中にも出てきたり、私の作った歌や小説にも登場したりして続いた。
そしてその程度の距離では間に合わなかった。
やがて役者となって出演した劇中にも赤い糸は出てくるがまだ先に続く。
人生のあらゆる場面で糸を手繰るがその先の正体は見えない。
私はいつしか随分年を重ねていた。
赤い糸を手繰るばかりの人生であった。

終点はあっけなかった。
赤い糸はただ途切れてお終いだった。
がっくり肩を落としていると背中から、なかなか追いつきませんでした、と女性の声がする。
振り返ると、丸顔の優しい顔をした女性が赤い糸を手に立っていた。
人生はたまには待ったり振り返ったりしないといかんね。
私たちは一緒に赤い糸をふわっと放し、それぞれの手を取り合った。
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公開:20/11/27 17:48
更新:20/11/28 05:13

MIKI( インドネシア )

インドネシア暮らし

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