『水たまり屋』

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綺麗な虹がかかった午後だった。
みんなが空を見上げる中で、明らかに怪しいおじさんがいた。
平べったい箱をたくさん台車に乗せて地面をキョロキョロ見ながら歩いている。
絶対にピザ屋の配達じゃないと思う、地面や空を交互に見ているんだから。
おじさん、なんだか急に立ち止まって、箱を一つ取り出した。中を開けて取り出したものに思わず「えっ!?」と声を出す。
透明なプルプルした平べったい何かを持つおじさんもこちらに気付く。
「これは水たまりだよ、好きなところに水たまりを作るんだ」
おじさんが置いた瞬間、プルプルは地面に溶けていった。
「な、これがおじさんの仕事なんだ」
でもどうしてこんなことを? 
まだ疑問の残ることを悟られたのか、おじさんは「ここ見て」と水たまりを指差す。
なんだろう、と私が覗き込むと、空に映った虹が綺麗に反射していた。
今この瞬間、虹を見下ろしているのは僕だけなんだろうな。
ファンタジー
公開:20/07/19 21:00
更新:22/12/21 19:36

白川湊太郎( 東京 )

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