ガラス職人の初恋

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男が幼かった頃、幼なじみの女の子とラムネを飲むのが夏の楽しみだった。その日、女の子がラムネ瓶を太陽に透かして「きれい」とつぶやいた。確かにきれいだった。じりじり身を焼く太陽の光の中でさえ涼しげなビー玉も、彼女の横顔も。けれどもなぜかその日だけは、彼女がうっとりとラムネ瓶を見つめる様子に無性にいらついて、気付くと横から瓶を引ったくって地面に叩きつけていた。はっと我にかえると、彼女は泣きながら走り去っていた。その夏以降、二度とラムネを飲むことはなかった。
やがて男はガラス職人になった。今日は愛する妻との結婚記念日だった。プレゼントを渡すと妻ははっと顔を上げた。「あの日のことをずっと謝りたかったんだ。」妻の手にはガラス職人が作ったラムネ瓶が握られている。瓶の中に入っているのは丸いサファイアだ。彼女はラムネ瓶を太陽にかざすとぽろぽろ涙を流しながら「綺麗ね、久しぶりにラムネ飲みましょうか」と言った。
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公開:20/06/21 20:48

カラナシ

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