新芽輝く八十八夜

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友達のマリコが結婚する時、彼女の家族は猛反対した。相手は大きな茶農家の息子で、ペットボトルのお茶しか知らない彼女がそんな家に嫁ぐのは無謀に等しい。結局マリコは半ば勘当同然に家を出た。

数年後に私が彼女の元を訪れると、マリコは広い茶畑を嬉しげに案内してくれた。怒られてばかりでねと日焼けした顔を綻ばせる。
青空の下で無愛想なお舅さんが、飲むかと急須を突き出した。無骨な手で無造作に注がれたお茶の水色は澄んだ淡い緑色だ。
「きれい…」
だがお舅さんは何も言わなかった。仕方なく私も黙ってお茶を啜る。
「…たまには会いにきてやってくれ。親も故郷も捨ててきた馬鹿な奴だからよ」
不意にぼそりと呟くと、彼はまた急須を差し出した。隣のマリコがえへへと笑う。

—毎年この季節になると宅配便が届く。
『今年もいいお茶ができました。マリコ』
添えられた一筆箋の丸っこい文字も相変わらずだ。
夏がまた、近づいてきた。
その他
公開:20/05/05 09:08
更新:20/05/05 11:06
新茶の季節到来! 早速昨日買った 水色(すいしょく) =お茶の色

秋田柴子

2019年11月より、SSGの庭師となりました。
現在SSから長編まで幅広く書いております。

【活動歴】
・東京新聞300文字小説 優秀賞1回 入選2回
・SSG 空想競技コンテスト 入賞
・『第二回日本おいしい小説大賞』最終候補(小学館)
・SSマガジン『ベリショーズ vol.5,6,7,light』掲載(Kindle無料配信中)
https://www.amazon.co.jp/dp/B096821HSW

【近況】
 いろいろ書いてます(笑)

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