ふたつのボール

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愛犬のバニラが死んでしまった。
大好きだったボールを棺の中に入れてやろうと探してみてもどこにも見あたらない。ボールは同じのがふたつあるのだが、ひとつがどうしても見つからない。
バニラとリンにひとつづつ与えたボール。いつもバニラが両方とも独り占めして、リンから奪い取っていた。今思えばそれさえも可愛らしい。
キッチンから廊下に続く扉を開ける。後ろをついて回っていた妹犬のリンが、廊下の奥をじっと見ている。
床の匂いを嗅ぎ始めたリンの鼻先に、見覚えのあるボールがコロコロと転がってきた。
暗闇の奥にぼんやりと白い光が見える。
「バニラなの……?」
ワン!という懐かしい声が返ってきた。
近づいたら光は消えてしまった。
バニラ、あんなに独り占めしていたのにリンにひとつあげるんだね。えらいね。

翌朝、バニラの棺を見るとボールがふたつとも入っていた。
んん? なんだバニラ、一晩貸してあげただけだったのか。
その他
公開:20/04/03 09:35
更新:20/04/03 09:39

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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