五月晴れの昼下がり

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 五月晴れの昼下がり、余暇を無為に過ごすのも良いか、などと思ったが、存外、落ち着かないもので、雑誌に手を出してみたり、ラジオをかけたりと、時間を持て余し、ソワソワと浮足立ってしまう。
 そんな風に無聊をかこっていたところ、妻に声をかけられた。
「晩の買い物に行くけれど、食べたい物はある?」
 これ幸い。
「車を出そうか?」
 それじゃあという事で、二人で郊外の大型スーパーへと向かった。
「欲しい物があったら言ってね?」
「ああ」
 そう言われたが、カートを押す妻の後を、時折「これ食べる?」という問いに頷くのみで、黙ってついて歩くだけに終わった。
 妻が支払いを済ませ、品物を袋へと詰めるのを、やはり黙って見ている。
「よいしょ」
 と、提げた荷物を、妻から受け取るために手を差し出した。
 その差し伸べた手を、妻はそっと握り返し、そのままつないで歩き出す。
 そうじゃない!
 が、まあいいか。
その他
公開:19/05/20 08:15
更新:19/08/01 01:55

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