先輩、これを

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「先輩、これを持って行ってください」

澄み渡る今日の空の様な、くもりない笑顔で、”雨傘”を差し出す彼女には、秘密がある。

それは、少し変わった予知能力。

いつ、どこで、何のためにかは、わからないけれど、将来必要となる品物がわかるという。

チェーンの切れた自転車を渡された時は、これどうするの!と思ったけれど、警官に追われたひったくりが、この自転車を奪って自滅するに至った。

或は、釘抜きが無くて困っていた演劇部に、なんて物を持ち歩いてんだよ!とおののかれる一幕も。

今、目の前に、自販機の下をのぞき込んでいる子供がいる。お金を落としてしまったらしい。

仰げば広がる青空に、雨傘の使い道を知った。

彼女の予知は、絶対に外れない。

「先輩、これを受け取ってください」

翌朝、手渡された物の意味を、僕は懸命に、それはもう全力で考察している。

ハンカチにくるまれた、このお弁当の意味を。
SF
公開:19/05/07 19:56
月の音色 『お弁当』 ただいまー 連休から戻ってきました

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