金魚心中

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文机に向かって終日原稿を書いていた。
そろそろ休もうかと思った所に
傍らの金魚鉢から彼女が話しかけて来た。

──旦那さん。旦那さん。
「なんだい?」
──お水。こんなに濁ってしまっては、旦那さんのお話が読めないわ。
「そうかい。それじゃあ水をかえてあげよう」
──ううん。いいの。それより其処のガラス玉を頂戴。
金魚は僕がとって置いたラムネのビー玉を両手で恭しく受け取り、嬉しそうに微笑んだ。

指先が少し濡れた。

──あたしの命はそろそろお終いだから。
──最後にこうして尾ひれに綺麗なおもりをつけて、言葉の海に飛び込みたかったの。
──花嫁衣裳よ。

彼女はそう云うと、
手際よく自身の尾ひれにガラス玉を結い上げ、
勢いよく跳ね上がると僕の書きかけの原稿の束へと身を投じた。
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公開:18/12/26 03:11
更新:21/12/05 17:18

椿あやか( 猫町。 )

【椿あやか】(旧PN:AYAKA) 
◆Twitter:@ayaka_nyaa5

◆第18回坊っちゃん文学賞大賞受賞
◆紙媒体で単著が出せるよう、精進中です。
◆お問合せなど御座いましたらTwitterのDM、メールまでお願い申し上げます。

◆【他サイト】
【note】400字以上の作品や日常報告など
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