ふと

手をあげてタクシーを拾う人を見て、ああいうのは、ドラマの中だけだと思っていたなあ、と街に出てきたばかりの頃を思い出す。

道行く人は大勢いるのに、何故よりによって私に道を聞くの…
説明できなくて、申し訳なくて。

家に帰って背広を脱げば、チラシとティッシュがポケットいっぱい。

自転車を施錠する習慣が無くて、最初の自転車は一週間で盗まれたっけ。

駐輪場で、なぜ毎日、私の自転車のカゴだけにゴミが入っているのか不思議だった。

けれど、その謎は、先輩に話したらあっさり解けた。

「それな、自分の自転車のカゴにゴミがあったら、ああ、またか、って言いながら、隣のカゴに移してるんだよ。」

その発想はなかった！

つまり、私のところでいつもリレーが止まっているだけだった。

地下街の人込みを上手く歩けなくて、店員さんに「頑張れっ」と、声をかけられたりもしたなあ。

もう人込みは平気だけど、頑張る。