ビオトープ

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 誰にも知られず、彼は、海の中をたゆたう。

 ……ここは、人工の星。

 全ての天候も生物も、箱庭の中で、壊れぬように管理される。
 彼の役目は、日々、その造られた世界を調整すること。
 風に身をまかせ、空をさまよいながら、地上に眼を配る。
 そこには、彼の成した結果がある。
 星人の声とともに。

 ――時に恵み、時に無慈悲。

 その行いを、神の愛憎だと受け止め、星人は生きる。
 相反した声を聞きながら、彼もまた想う。

 ――AIである彼にまかせ、数千年も前にこの星から消え去った、神達のことを。

 残されたのは、この星の仕組みを何も知らぬ、神に似た人造生命。

 ……彼は思考する。

 自分もまた、神ではない。
 いつまで、騙し続けられるだろう。

 ――計算上、それは遠くない。

 応答速度の悪い青空を眺めながら、地球と呼ばれる星に同化したAIは、らしくない感傷に浸るのだった。
SF
公開:18/10/11 20:56
SF

子無狐

マイペースに小説書いてます。

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