透明になる薬

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いじめられっ子の僕に、助手さんが薬をくれた。
「これはねマサオくん、透明になる薬なんだ。これでいじめっ子をやっつけられるよ」
薬はリンゴジュースみたいな味だった。
でもちっとも透明にならない。
「おかしいな。博士は『完成じゃ!』って言ってたのに」
僕はあきらめて家に帰った。

次の日もいじめっ子がからかってきた。
でもなぜか全然怖くなくて、僕が体ごとぶつかるといじめっ子は転んで泣きだした。
それからはいじめられなくなった。
そのことを話したら、博士も助手さんもすごく喜んでくれた。僕はありがとうと言って家に帰った。


「薬は失敗でしたけど、良かったですね」
「何が良かったじゃ、勝手に持ち出しおって。まあ今回は大目に見るわい。それに」
薬は失敗ではなかった。あの薬は姿ではなく、心の中の色眼鏡を透明にする効力がある。だからマサオは怖くなかったのだ。
でも、それを言う必要はないなと博士は思った。
その他
公開:18/06/19 17:18
更新:18/06/21 21:46

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