七夕の魔法(土曜夜市その壱)

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七夕の夜市は決まって不思議なことがおきる。
一番客は白い浴衣の女の子だった。
「やるかい?」と聞くと頷いたので金を貰いポイを渡した。
夜市も終わりが近づいた頃やけに金魚が少ないことに気づいた。
ふと、あの女の子が目に入った。一番に来て一匹も掬っていないどころか、白だった浴衣の色が橙に変わっている。
俺はその子の様子を注意深く窺った。
やっと女の子がポイで金魚を掬った。かと思いきやその金魚を自分の浴衣に向けて弾いた。すると金魚は浴衣の表面にちゃぷんと着水するように吸い込まれスッと金魚柄に変化した。
瞬間、浴衣の橙色がどろっと動いた。橙だと思っていたのは金魚の群れだ。
女の子の水に浸かった指の部分だけ、七夕の魔法が解けかかっていた。
可哀想だがこっちも生活がかかってるんだ。
俺は柄杓で水を女の子にそろりとかけた。
白浴衣の上を跳ねまわる金魚たちと濡れた短冊。その横で白い子猫がみゃあと鳴いた。
ファンタジー
公開:18/06/09 18:24
更新:18/06/30 18:19

松山帖句( 松山城の麓 )

松山はええところぞなもし。だんだん。

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