親父が息子に会いにきた、それ以上でもそれ以下でもない話。

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 すまん毒を盛ったと、うなだれる親父。
 意味がわからない。
「意味がわからない」と伝えると、親父がお土産に買ってきたケーキを指さした。
 意味がわからない。
 ふと自分の口元を見ると、そのケーキをくわえてる。

 そうだ、一口食べたところだ、そこで親父が崩れ落ちたんだった。いや、崩れ落ちたと思ったらちゃんと体は支えられていて……そうだ、土下座だ。何かを詫びたんだったな。なんだっけ。

 思考がつながっていく。

 突然狂ったように胸元、首元をさする、まさぐる、かきむしる……

「すぐには毒は効かないよ」

 言われてみれば苦しくない。

 2時間は大丈夫だ、座れ、というひさしぶりに訪ねてきて、息子に毒を盛った親父に対し、不思議と怒りは湧かなかった。

 あと2時間。たった2時間の余命を、俺はどうやら親父との会話に費やすことになりそうだ。
 2時間後、苦しみだして死んだのは親父の方だった。
ミステリー・推理
公開:18/03/14 18:40

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