2番目に大事なもの

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「君は、ぬいぐるみを愛せるか」
隣人が邪悪な気を纏い、やっとの思いで出したような声で聞いてきた。
少しの沈黙が訪れる。そして私は、迷いのある声で発する。
「どのくらいの時間を共にしたかによると思います」
 隣人は数分考えた後、そうかと言い帰ってしまった。
 隣に住んでいる30代前半と見られる男性は、大型犬を飼っており、毎朝散歩をしている。しかし今日は、犬は連れていなかった。何かあったのだろうか。
 夜家に帰り、親に聞いてみると、隣人は飼い犬を殺し捕まったらしい。動機は大事なぬいぐるみを傷つけられたから、だそうだ。
 私は、まだぬいぐるみを愛したことがないから理解できないのだろうか。
 命の有無で言えば、悪い言い方だが、価値はあるはずだ。怒りに任せて殺していいはずがない。
 犯人は、こうも言っていたそうだ。
「これが正解だ」
 しかも、何の迷いもなく。
 
その他
公開:21/03/10 17:40
更新:21/03/10 17:43

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