召しあがれ

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祖父は柿が好きだった。
透明になるまで熟してスプーンで食べるのだ。

早朝、目が覚めた。
布団で二度寝したら起きれない。
仏間のこたつでうつらうつらしておこう。

息が霧ぐらいに目の前を白くする。
朝は氷点下。水道も出しっぱなしにしなければ凍る。
もちろん暖房もなにもつけていない仏間に入ったところで状況は変わらず。寒い。
こたつのスイッチを入れる。
ふと、目の前の柿に気付く。
透明なオレンジ色。触るとかたい。
ほぼ液体の柿は1晩のうちに凍ったのだ。
祖父はこういう時、お皿に柿を乗せてこたつで熱した。
待ちきれず少しシャリシャリした柿を食べていた。
寒い寒いと文句を言った。

私はお皿に柿を乗せ、こたつで解凍させる。

熟柿は2つ。
少し凍ったものを食べてみた。
なるほど、これはこれで美味しい。
でも流石に芯から冷える。
もう1つは完全解凍。
それをスプーンと一緒に添えて、線香に火を灯した。
その他
公開:20/10/26 00:59

雨森れに( 東京 )

色合いの綺麗な物語を紡ぎたい。
シーンごと切り取られた刹那。
不思議、恋愛、ファンタジー、怪談、純猥談などをチラホラと。
中身はお酒が好きなアグレッシブ。

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