ドナー

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×月×日。
娘が目を覚ました。だが記憶を失くしている様子。ショックで虚脱した妻を抱えてひとまず帰宅。

×月×日。
娘の友人から話を聞いた。事故にあったのは私の誕生日をこっそり祝う為だったらしい。やはり親思いのいい娘。

×月×日。
記憶を移植してくれる人物がいるという。闇医者だろうか。これから会いに行く。

×月×日。
娘が私たちの事を思い出してくれた。妻も泣きながら喜んでいる。このまま移植を続けていこう。

×月×日。
移植した記憶は私から抜けていく。共有できないのは辛いが、娘も妻も少しずつ前向きに生きている。夫として、父として、二人の幸せを望む。





このボロボロの日記帳はポケットに入っていた。なにかの物語だろうか。
それより私はこの病室に来てどのくらい経つのだろう。いつも泣いている中年の女性と若い女性は誰なのか。
まあどうでもいい。どうせ自分の名前さえ分からないのだから。
ミステリー・推理
公開:20/08/23 08:26

森川 雨

ショートショートには不向きな書き方かもしれませんが、こちらで修行させていただきたくお邪魔しました。

よろしくお願いします。

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