22:00の幽霊

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 22:01発の電車で出会った幽霊は、こう言った。
「気になるなら、教えてやるよ。俺は"22:00の幽霊"なんだ」
 ……なんだそりゃ。時間も、死んだら幽霊になるのかい?
「そりゃそうさ。俺たちは、次々に死んでいくんだ」
 そういうもんなのか?
「そういうもんだぜ。俺は死んだ――だから、今日という日の22時は、もう二度とやってこないのさ」
 じゃあ、死んだ時間はどこへ行くんだい?
「別に?どこにも行かないさ。あんたの中に埋葬されて、積み重なっていくだけだよ」
 少し嬉しそうに、ソイツは笑った。
「……それじゃ、俺はそろそろ消えるよ。"明日の22:00"にも、よろしく」
 それっきり、ソイツの声は聞こえなくなった。
 ふと気付けば、知らない駅名のアナウンスが鳴っている――どうやら、目的の駅を通り過ぎてしまったようだ。
 参ったな。
 このままじゃ、23:00の幽霊にも会ってしまいそうだ。
 
公開:20/08/21 22:00

ぢろ吉郎


11/4~11/13の期間、「勝手に秋のお茶漬けデー」と題しまして、お茶漬けの物語を投稿中!(ストーリーに繋がりはありません)
11/4:「御茶ノ漬駅へようこそ」
11/5:「茶漬湖の底へ」
11/6:「神々しきお茶漬け」
11/7:「お茶漬け勇者の箸と匙」
11/8:「茶漬中毒」
11/9:「米どころ、茶漬けの祟り」
11/10:「茶が先か、卵が先か」
11/11:「檻の中。お茶漬けと一人」
11/12:「お茶漬け博物館」
11/13:「明日のお茶漬け」
お茶漬け、完結。充実したお茶漬けデーになりました……!
Twitter、ゆった~りと更新予定です。
https://twitter.com/dirokichiro?s=09

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