家族

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子どもの頃、小鳥を飼っていた。
小さくて目が丸く、見つめて近づきすぎると鼻をつつかれる。

身体からは牛乳を拭いたぞうきんの臭いがして、始めは嫌でしょうがなかったが水浴びをして臭いが薄れるとなんだかんだ物足りない自分がいた。

小鳥は僕が学校に行くと突然いなくなっていた。寂しくてただ呆然とするしかなかった。姉さんはただ僕を抱きしめてくれた。一緒に消えた母の事を思ってか、泣き崩れていた。

高校生になり母が突然帰ってきた。姉は半狂乱になり母を叩き始めた。母はごめんを繰り返して涙を流して、そっと姉を抱き寄せた。

何だか美談の家族話みたい。目があった母に僕はこう言った。

小鳥と僕の時間を返してほしい

僕にとって家族と呼べる存在は小鳥しかいなかった。
その他
公開:20/08/05 19:34

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