虹筆(こうひつ)

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その色鉛筆を買ったのは、品名に惹かれてだった。
『虹筆(こうひつ)』
一般的な黒い鉛筆を『硬筆(こうひつ)と呼ぶ。そこに引っ掛けて、たくさんの色が順番に並んでいるから虹の筆。うまい事考えるものだ。
一ケース十二色。七色じゃないのかと笑って、別にいいじゃないかと思い直した。可視光線のスペクトルなんて、実際は七つどころか無限に区分出来る。この虹は十二色もあるんだ、何だかすごく得した気分だった。

さて、何を描こうか。キャンバスに向かって虹筆を構える。
天然虹料のみで練り上げた、唯一無二の色彩が売りらしい。ケースの蓋に刻まれた日付と採虹場所を確認して、つい吹き出してしまった。
僕が生まれた朝、街には虹が架かっていたのか。
握った指がほわりと温かくて、虹にも温度があるんだと知った。明日の朝はどんな色で目覚めるだろう。筆先が紡ぎ出す極彩色の光を見つめながら、僕の頭は現在進行形の未来を追い掛けていた。
ファンタジー
公開:20/09/13 21:09

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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