しょんぼりバスガイド

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「右手をご覧下さい。潰れた第三セクターです」
 車内が嘲笑に満たされる。僕は唇を噛んだ。
 
 地元が妙な町おこしを始めた。
 名付けて「しょんぼりバスツアー」。
 悉く失敗した復興策の跡地をめぐる自虐ツアーだ。
 全国の物好きから大評判らしい。
 
 バスガイドが明るい声で、地元の恥を晒していく。
「右手をご覧下さい。ただ古いだけの神社です」
「右手をご覧下さい。クラゲしかいない海水浴場です」
「しょんぼりバスツアーに参加いただき、申し訳ございませんでした」
 
 ツアー終了後、僕は決然とバスガイドに声をかけた。
「君、こんな仕事、本当にやりたいのか」
「……」
「辞めなさい。まだ若いんだ。この町を出て行ってもいい」
「お客様」バスガイドの笑顔が陰った。「左手をご覧ください」
 ガイドの左手薬指には、悪趣味なリングが嵌っていた。
 ゴリラみたいな運転手が、にやりと笑い、左手を掲げた。
公開:20/05/28 21:17

佐賀砂有信( お前の後ろ )

さがすな ありのぶ です。
グラインドコアとサメ映画が好きです。

長めのやつ
https://kakuyomu.jp/works/1177354054880370626

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