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落とし物係から電話があって、おれの小指の骨が届けられているという。
どうりで足に力が入らないはずだ。彼女に振られた腹いせに壁を蹴ったせいだと思っていたが、骨のせいか。
「散歩中に犬が見つけたそうですよ」落し物番号を告げると、職員が薄灰色の包みを両手で抱えて持ってきた。
「この皮が握りしめていたんですって」職員はおれの手に骨を握らせた。
「あ、皮も持って帰ってくださいね」
「皮はおれのじゃない」
「でもあなたの骨を握ってたんだから」
職員は皮をおれに押しつけると、さっさと席に戻っていった。
アパートに帰って畳のうえで皮を広げると、それは彼女の皮だった。ずいぶん色が抜けていたが、確かに彼女の皮だった。
自分から振っといておれの骨を持っていたなんて、一体どういうつもりだったのか。

しばらくその皮を壁に掛けていたらすっかり乾燥して、いつだったか、風の強い日に窓を開けたら、粉々に飛び散っていった。
その他
公開:20/07/15 19:54

工房ナカムラ( ちほう )

ボケ防止にショートショートを作ります

第二回 「尾道てのひら怪談」で大賞と佳作いただきました。嬉!驚!という感じです。
よければサイトに公開されたので読んでやってください。

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