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私は他人の感情が分からない。
そんな人が日常生活に支障が出ない様に補情器が開発された。
人の発言から喜怒哀楽を分析し割合を教えてくれる優れものだ。
おかげで人間関係に困ることは無くなった。
補情器の指示に間違いなどない。

ある日会社へ向かう途中のことだ。
いつも渡る歩道橋を歩いていると、柵を越え下側の線路を見つめていた男性と目が合った。

「邪魔はしないでおくれよ。俺はこんな世界から解放されることが嬉しいんだ。」
彼は私に言った。
自殺をしようとしている。止めた方が賢明だろうか。
ーピピッ!喜70%、哀30%です。発言より感情は「喜び」に分類されました」ー
そうなのか。そういえば喜びは分かち合うべき感情と学んだ。
であれば私に言えることは一つだ。
「あなたが嬉しいのなら、私も嬉しいです。」
彼は飛び降りた。その瞬間とても穏やかな笑顔を浮かべていた。
やはり補情器の指示に間違いなどない。
その他
公開:20/06/24 17:26
更新:20/06/26 17:20

むらポックル( 関西 )

創作が大好きで、作品を投稿しようと始めました
400字の中に物語を描く、とても楽しいです
他作者様の作品も楽しく拝見しています
未熟者ですがよろしくお願いします

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