行進塚

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かつて庚申の日は、人々が夜通し宴会をする楽しい夜であった。寝ている間に体内から三尸虫が抜け出し、その人間の悪事を天帝に報告しにいくことを信じていたのだ。悪事をばらされたくない人々は、誰も眠らなかった。
三尸虫は、「悪事がばれないように」を名目に、どんちゃん騒ぐ人を見るのが好きだった。元来、報告するのを面倒に感じる質でもあった。
なのに、近頃はどうだ。平気で眠ったかと思えば、全然違う日に夜通し起きている。
「こんなやつの悪事を報告したっておもしろくないよなあ」
退屈をもてあました彼らは、最近新たな楽しみを見出した。
そっと体を抜け出し「庚申塚」を担いで行進するのだ。人々が行き交う街での行進は、特にスリルがあっておもしろい。
少しずつ「庚申塚」が移動していることに、街の人は誰も気付いていない。あなたの近くにはないか、探しみてみてほしい。それを動かしているのは、案外あなたの中のものかもしれない。
ファンタジー
公開:20/04/30 22:08
更新:20/04/30 22:32

arupara( 東京 西部 )

田丸さんがご出演された『情熱大陸』であらためて空想の力を思い知らされ、読むだけじゃなく書いてみたくなりました。

書いた文章のイメージをイラスト化するのが最近の楽しみです。

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