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誰もいない夜道にポツリと赤いお守りが落ちていた。

男は何気なくそれを拾い上げ、書かれた文字に戸惑った。
「開運……鬼顔?」
文字の下にはギョロリとした瞳と、口をへの字に力強く結んだ鬼の顔が刺繍されていた。
すぐに捨てようと思ったが、なぜか気になって、そのまま懐に入れてしまった。 
数日後、男は仕事で大きな企画のリーダーに抜擢された。上司は「たまたまお前しかいなかった」と言った。
企画はトントン拍子で成功し、それがきっかけで、社内一の美人とつきあうようになった。
どうして僕なんか、と聞くと「タイミング?」と彼女は小首を傾げた。
男の人生はその後も順風満帆。
「まるで残りの人生の運をまとめて使ってるみたいだな」
酒に酔って上機嫌で夜道を歩く。
懐からお守りを取り出し「ありがとよ」と囁いた。次の瞬間、鬼の口が開き、狂暴な牙がギラリと光った。


誰もいない夜道にポツリと赤いお守りが落ちていた。
ホラー
公開:20/02/06 06:00
更新:20/02/06 10:44

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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