どうかあの子を

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どこにいるのかわからないから探したい。でも、探してはいけない気がする。

山で出会ったあの子は、父の後ろをついてまわった。勝手に車に乗り込んで、一緒に帰ってきたのだ。家に着くと、あの子はお腹を壊した。山では土を食べていたんだろう。

とにかくあの子はすばしっこくて、いつも野生を忘れなかった。だからか、愛想なんてこれっぽっちもない。かまいすぎて引っかかれたり、抱っこをするとすぐにおりたいと言ったり、おろすとすっ飛んで行ったり…ご飯のときだけ甘えるあの子。本当に無愛想だった。でも世界で、いや、宇宙で一番可愛い子。

年をとっても可愛さは衰えなかった。まん丸い目も、スキッと鋭い目も、あの子だけのもの。お姉さんみたいで、友だちみたいで、ツンとしてるけど、優しくて…

「見つかりたくないからここにいるのに、探したら意味がないじゃない!」

そう言うだろう。九つの命はまだ残っていると信じているよ。
その他
公開:20/02/02 22:42

みみ

むかし話、おとぎ話が小さい頃から大好きです。
誰かの目に留まるような物語が書けるように頑張ります!

コメントや☆をつけてくださる方、本当にありがとうございます。嬉しいなぁ、幸せだなぁと心から思いますm(_ _)m

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