スノートレイン

21
13

今年の冬こそスノートレインに乗ってみたい。若者は目撃情報のあった北海道の大平原にテントを張った。

スノートレインは、頑丈な雪氷でできた蒸気機関車の形をした乗り物で、煙突から吹雪を撒き散らしながら走るという。運転手はサンタクロースや冬将軍、雪男・雪女など諸説あるがまったく不明だ。
ある登山家が雪崩に巻き込まれて遭難しかけたとき、次の瞬間にスノートレインの乗客となっていて宇宙へ向かったらしい。一等星のシリウス、プロキオン、ポルックス、カペラ、アルデバラン、リゲルを結んでできる「冬のダイヤモンド」を間近に車窓から眺めたあと、スノートレインで地球へ戻り、気を失っているところを奇跡的に救助されたという。

若者は幾日を大平原で過ごしただろう。その日は「天使の囁き」とも呼ばれるダイヤモンドダストがキラキラと降り注いで虹色に輝いていた。すると、天空から舞い降りたスノートレインが氷霧の中から姿を現した。
その他
公開:19/12/08 06:10
北海道 蒸気機関車 サンタクロース 冬将軍 雪男 雪女 雪崩 冬のダイヤモンド ダイヤモンドダスト 氷霧

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容