麗梅

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小生が彼女と出会ったのは、梅の花もほころぶ成人の日。
成人の祝いとして、小生は贈られた。
小生を腕に巻いた彼女の手首から、脈拍が伝わってくる。
少し小走りで弾むようなそのリズムはまるで、梅の枝の間で戯れるメジロのようだ。
一方、小生は一秒ずつ正確に時を刻んだ。
彼女の時間と小生の時間が重なり、生まれたそのメロディーを
小生は『麗梅』と名付けた。
それから、ずっと小生は彼女と時を刻んできた。
その中で生まれたメロディーはどれも小生の宝物だ。
しかし、ある日、小生は彼女の腕から外され、箱に仕舞われた。
ただ静かに時を刻むのは、とても味気ないものだ。
小生はゆっくり、時を振り返りながら、懐かしいメロディーの中で微睡んだ。
そうして、長い時間が過ぎ、
ーー誰かが小生を腕に巻いた。
途端に、『麗梅』が流れる。
彼女によく似たその子は、照れ臭そうに小生の面を撫でた。
今日は、成人の日だ。
ファンタジー
公開:20/01/13 11:07

yori

読書が趣味なのですが、読むだけじゃなく自分でもお話を書いてみたくなり、筆をとりました_φ(・_・
ファンタジー系のお話が多くなると思います。
ゆくゆくはSF系にも挑戦したい。
主に土日に出没します⊂((・x・))⊃

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