乳の雨

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母乳育児は世界中からなくなった。どの母親からも母乳は出なくなった。共働きが増えて、人工乳育児が増えたことで、人間は新人類に進化を遂げたのかもしれない。
「おなかすいたねぇ」
公園で楓とふたり。楓は弱々しく泣く。
「ママもすぐに行くからね、ごめんね」
その時、白いものが空から降ってきた。
「何……?雨?」
舐めるとそれは甘くて、お乳だと思った。
「ほら、飲んで、お乳だよ。よかったね、楓」
目を閉じて必死に飲む楓を見て、私は心から安堵した。

「あの奥さん、育児ノイローゼだったんだって。お金もなくて、人工乳も買えなくて、とうとう雨を飲ませたんだって!」
母子ともに保護されたが、母親は乳の雨が降ってきたと言い張る。一ヶ月もまともに飲めていなかったのに、赤ちゃんの状態は普通の乳児とは比べ物にならないくらい良かった。奇跡は本当に降り注いだのかもしれない。神様がくれた、慈悲の乳だったのかもしれない。
その他
公開:19/08/13 11:36

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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