海の月

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「あの生き物って、お月様の子どもなんだよ」

小学生の頃、近所にいた年上の幼馴染は何でも知っていた。
その夜は、幼馴染に連れられて浜辺を歩いていた。
大人も寝静まった真夜中。明かりは私達の持つ懐中電灯だけ。照らされた幼馴染の大きな背中を、何故か今でもよく覚えている。

どれくらい経った頃だったか、急に立ち止まり、海を指し示す幼馴染。慌ててそちらに目をやった。

銀色に輝く、小さな何か。無数のそれが海から浮き上がり、空へと昇っていく。
丸っこい笠のようなパーツの下に生えた、たくさんの細長い糸のようなものを揺らめかせ。
ふらふら、ゆらゆらと、闇に満ちた空に浮かぶ、真ん丸な銀色の輝きを目指して。

「だからね、満月の夜はああして里帰りするんだよ」
耳元で囁いた幼馴染の声も、何故か今でもよく覚えている。
ファンタジー
公開:19/08/13 00:00
海月 幼馴染

PURIN

超ド級の素人です。他サイト様でも書かせていただいています。
Twitter @maybePURIN

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