迎え盆

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道草をくっていたらすっかり遅くなってしまった。
「大変!」
急ぎ足になる。
けれど煙は追い風に乗ってどんどん遠ざかって行く。

待って
待って
ほんとにおじいちゃんたら昔から足が早かったんだから

突然、煙が途切れた。
あの畑を過ぎれば家。
畑のすみにおじいちゃんが大事にしていた白い桔梗が一輪咲いていた。
おじいちゃん、見たかしら。

「ただいまぁ。」
「おかえり。ご苦労さんだったね。さあさ、早く上がっておいで。麦茶が冷えてるよ。」
「はあい。」

カンバの残りを祖母に渡し、ちゃぶ台に座ると、飲みかけの麦茶のコップがふたつ。

「誰か来てたの?」

「おじいちゃんがね、あんたを待ちきれなくて一足先に帰って来ちゃったもんだからね、先に一緒にお茶を飲んでいたんだよ。」

おじいちゃんの写真の、吸いかけのタバコの煙がふるっと揺れた。
その他
公開:19/08/12 19:22

文月そよ

のんびりゆるぅり書いてみたいと思います。

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