評論果

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「お前もそろそろ評論果を食べる時期がきたようだな」
村長のガタリが鏃の先を磨きながら言った。

「評論果?」
ガタリの指す木の枝に赤い果実が見えたので、そのひとつを捥いで口に入れた。
「旨い!」
少し渋味や辛味もあるけれど、全体としては甘くて旨い。
「我らモノ族の成人に欠かせない栄養分があるんだ」
もうひとつ食べてみた。
今度は辛味が強かったけど、やはり最後には旨味が口全体に広がり、体に染み渡っていくのを感じた。
「これからは毎日、評論果を食べなさい」
「はい!」

「ただし、あそこにある評論果モドキには気をつけろよ」
ガタリは評論果にそっくりの赤い果実を指した。
「え?」
「よく似ているが、あれは渋味や辛味ばかりで体にも悪い」
「でもどうやって見分けるんです?」
「ごらん、偽物には必ず揚げ足鳥が群がっている」
そこには毒々しい羽をした珍妙な鳥が、評論果モドキの実を旨そうに啄んでいた──。
青春
公開:19/11/12 01:45
更新:19/11/12 10:28

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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