『柱の傷が並ぶとき』

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柱の傷は一昨年の、五月五日の背比べ。
この風習はずっと続けてきている。
兄貴が生まれた時に親父が始めたんだそうだ。
傷を数えてみる。俺のが16本。兄貴のが18本。
俺は柱に背を付けると小刀を引く。真新しい傷がつく。その3センチほど上に、同じように真新しい傷。
くそっ、兄貴まだ背、伸びんのかよ。
自分より3センチ高い兄貴を想像してみるが、うまくいかない。
兄貴は10歳のまま遺影の中で時を止めている。
姿はわからないが背丈はわかる。変な感じだ。
まあ、俺も兄貴も大人になればいずれ成長は止まる。
きっと、柱の傷が同じところに並ぶ日も来るだろう。
その時はどうしようか。
酒でも飲んでみようか。
兄貴と、親父と、三人で。
青春
公開:19/10/09 20:59
節目

ひょろ( twitterが主。あとは「月の音色」の月の文学館コーナー )

短いものしか書けない系ものかき趣味人
江坂遊先生の「短い夜の出来事」(講談社文庫)に入っているハイパーショートショートに触発されて、短い小説を書いている。
原稿用紙5枚→3枚→半分(200字)→140字(twitter小説)と着々と縮み中w。
月の音色リスナー

目にも止まらぬ遅筆を見よ!

twitterアカウント:hyoro4779

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