願望遠鏡

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「親父!俺のこと願望遠鏡で見てよ。プロ野球選手に近づいてる?」
「う~ん…その願望はまだ遠いようだ。でも、小さくてもちゃんと見えているから、これからも練習を続けなさい」
高校生の息子は嬉しそうに頷くと野球の自主練を再開した。
必至に頑張るその姿に思わず笑みが浮かんでしまった。
願望遠鏡。これは覗いた相手の願望を、それが叶うまでの距離を見ることの出来る道具だ。
敵わない夢だと願望遠鏡は何も映さない。黒く塗り潰されてしまう。
小さくても見えているということは、息子には才能があるんだ。
「お父さん、私の願望も見てもらえる?」
娘の言葉に驚いた。娘は今まで私に願望を見せてくれたことはない。どれどれ…
願望遠鏡を覗く。
すぐ近くで、娘はウェディングドレスを着て、幸せそうに笑っている。
まさか…!
「お父さん。今度の日曜日、会ってほしい人がいるの」
そうか…ついにこの日が来たか…
涙が一つ、こぼれた。
公開:19/06/13 18:38

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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