チックのパン屋 ~トースト~

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一日分、時間を超えた記憶に出会えます。

その女性は小さく呟いた。
「五年前の今日一つと珈琲」僕は見逃さなかった。女性には洋服とは不釣り合いに首元や手首に入れ墨がある事を。タックはタイムトースターに食パンを入れ日付を設定した。

「お待たせしました」
女性は焼けたパンをジッと見つめ、そして口にした。すかさずタックは僕に耳打ちした。
「五年後に変えといた」

突然女性の目から涙がスーッと流れ落ちた。そして僕を呼んだ。
「五年前じゃなかったです」
「はい。今のお客様が過去を見たら後悔でココロが溢れ返るでしょう。どんな未来でしたか?」
女性は自分の唇を強く締めた。そして深くお辞儀し、そのまま店を後にした。

僕はタックを呼んだ。
「おい!未来が不幸だったらヤバかったぞ!」
「大丈夫。だってあの人、この店の常連になるんだ」
「お前、さては!!」

今日もパンの匂いに溢れる店内でお客様を待っている。
ファンタジー
公開:19/05/22 05:54
更新:19/05/25 09:00
スクー 全身入れ墨タイムスリップ

たらはかに( 日本 )

たらはかに

https://twitter.com/tarahakani
猫ショートショート入選 「猫いちご ・練乳味」
渋谷ショートショート入選 「スク・ラブラブ・ランブル交差点(哀)」とか。

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