吐瀉花物 -ToshaKaButsu-

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 彼女は花を吐く。
 花を吐くタイミングは全く予測出来ないので、そんな時はこっそり教室の机の陰で吐き出す事も多い。原因は、医者にも分からないと言われたらしい。
 私はそんな彼女に頼み込んで、吐き出した花を受け取って部屋に飾っている。
 汚いよ、と彼女はあまりいい顔をしない。当たり前だ。けれど私は、それでも持ち帰って飾り続けるのだ。
 百合、薔薇、コスモス、梅、チューリップ、椿。
 造花の様に枯れないのだが、本物の様な美しさを誇るそれらを眺める。
 そんな生活を続けていた所為だろうか、或る日、私の頭に芽が生えた。
 彼女は泣いて謝った。私が望んだ事なのに、申し訳無い。全然気にしないでいいと答えても、彼女は泣き続けていた。
 その間にも花を一つ吐いたので、それを貰って大切に部屋に飾った。
ファンタジー
公開:19/07/16 19:37
幻想 不思議 不気味

宇津木健太郎( 我楽多街 )

優しい世界の話。
遥かなる宇宙の話。
夏の陽だまりの中の話。
世界を覆い尽くす青空の話。
あなたの隣に居る私の話。

そんな、日常から宇宙の果てまで存在する、不思議で空想的な話を紡いでいきます。

時々ホラーも書くかも知れないけれど。

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