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 頭に卵の殻を被った雛鳥が話題になっている。「カリメロ」みたいな雛鳥、といえばお分かりの方もいらっしゃるだろうか。アヒルやカルガモや鶏などの雛鳥の一部が、頭に殻を被ったまま日向ぼっこをしたり、ヨチヨチと散歩をしたり、餌を啄んだりしているのである。その姿はとても愛らしく、ローカルニュースにもなって、道路横断の際や、野犬や烏などの襲撃などから守られるようになった。
 ワイドショーのコメンテーターは、卵の殻によって上空の天敵の目を誤魔化し、野犬などに対してはその殻を囮として逃げる時間を稼げるのではないか、と解説した。
 しかし、この頭の卵の殻を取り除くことができないという事実が、その仮説の半分を否定していた。卵の殻は雛鳥の頭蓋骨と一体化しているのである。
 半年後。見守り隊に囲まれて日向ぼっこをしてた雛鳥達の頭の殻に突如としてヒビが入り、雛鳥達は一斉に倒れた。そして次々と卵が孵り始めたのだった。
その他
公開:19/07/15 10:30

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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