バレエと、どんぶり

8
9

「ふぅん。じゃ、みんなは、さっきまで別の世界にいた訳か?」
劇団の団長のノダさんは聞く。
「ええ。気づいたら皆で砂漠の上に」
主役の男優の言葉に、舞台の床に座り込んでいる5~6人の劇団員はうなずいた。
それも、全員、砂まみれだ。
男優は続ける。
「さっき、稽古で僕が、ラーメンのどんぶりを持って、バレエを踊ったんだ」
「そしたら、突然みんな、砂漠に飛んだんだ」
周囲の皆は、口々に言う。
ノダ団長は聞いた
「なぜ、どんぶりを持ってたの?」
「ええ。本番では陶器の皿を持って踊るんです。さっきは稽古だから、手近などんぶりで」
「バレエとどんぶり。極度の異文化の出会いが、異空間の穴を作ったか」
団長は呟く。
「で、東西が出会う地、中近東に飛ばされたのだ」
「なぜ、僕ら、戻って来れたんですかね」
「東西を繋ぐ砂漠のシルクロードを、瞬時に通ったのかも」
劇団の皆は思った。東西文化の、迷惑な出会いだなぁ。
ファンタジー
公開:19/02/23 23:29
劇団 カレンダー刑事・鋭意製作中

tamaonion( 千葉 )

雑貨関連の仕事をしています。こだわりの生活雑貨、インテリア小物やおもしろステーショナリー、和めるガラクタなどが好きです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容