太陽であろうとした男の話 〜200作到達記念〜

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男は自分が何者でもない事を知っていた。多くの人から優しいという評価を得ていたが的外れもいい所だ。そう思っていた。見せかけの柔和な印象は他人からの悪意に弱い自分を守るために身につけた消極的処世術だ。優しくはない。むしろ腹黒い。笑顔の奥で冷静に人に判断を下し、腹の底で蔑んでいる。そんな自分が嫌いだった。
それでも男は人に好かれたいと願っていた。渇望していたと言ってもいい。
自分を変えよう。自分を好きになる事から始めよう。ある日、男はそう決意した。
男は自分に自信がなく、打たれ弱かった。
しかし演じる事が得意だった。
男は「毎日が人生最高の日」と看板を掲げ、周りを照らす太陽であろうとした。弱くて黒くて卑屈な自分を隠した。自分大好きな人間を演じ続ける事により、いつしか自分を騙す事に成功した。

気がつくと世界が変わっていた。

温かく優しい世界の中で。
男は今日も誰かの心を照らしたいと願っている。
その他
公開:19/05/09 23:06
SSGの皆さん いつもありがとうございます。 これからもよろしく。 目指せ300作!

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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