低い桜

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物心つく前の朧げな記憶の一つが、どうしても忘れられない。
上を見ても桜、前後左右桜、視界一面全てが桃色に包まれる。
そんな記憶の中の光景は、大人になったいまでもこの世で一番美しい景色だと思う。
小さい頃の記憶だからあてにできないのに、春になる度その景色を探している自分がいる。
けれど、いまだそれに出会うことは出来ていない。

今日は妻と息子を連れて、低木の桜で有名な公園に来てみた。
もしかしたら、そこであの景色が見られるんじゃないか、と期待したからだ。
しかし残念ながら、どの桜も自分の背丈より少し高い場所にあり、望んだものは見られなさそうでがっかりした。

桜を見上げてばかりいると、息子がだっこ、と足元にだきついてきた。
一度しゃがんで息子を抱き上げ、そのまま頭の上まで高くあげた。

たかいたか〜い。

……そっか、この景色だったんだ。
その他
公開:19/04/14 21:19
更新:19/04/17 14:41
父親

空岸なし

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