「かりたい」

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年末年始、なにかと多忙である。そんな中、我が家の猫はのんきに居眠っていた。
「こっちは猫の手も借りたいくらいなのに」
その声を聞いてか聞かずか、猫が目を開け、伸びと欠伸をしたあと、フラリと何処かに消えた。

翌朝。
ボソッ、ボソッという音と、布団越しに感じる重みで目を覚ました。
猫が「ニャー」と俺を呼ぶように一鳴きした。のっそり起き上がった俺の目に飛び込んできたのは、無数の猫の手。
「なんじゃこりゃあ?!」
猫を見ると、口まわりから前脚にかけて血まみれだった。まさか、猫の手を狩ってきた、とでも?
いや、それだけではない。俺の手が猫の手に、猫の手が俺の手になっているではないか。
「貸してくれたのか。ご丁寧にスペアまで……」
茫然とする俺を尻目に、猫は俺の手で自分の頭を撫でていた。幸せそうな表情をしている。あぁ、と思わされた。
お前も借りたかったんだな。ここ何日か、撫でてやれてなかったもんな。
ホラー
公開:19/01/07 20:20

壬生乃サル

まったり。

2022年…3本
2021年…12本
2020年…63本
2019年…219本
2018年…320本 (5/13~)

壬生乃サル(MiBU NO SARU)
Twitter(@saru_of_32)

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