154. 妻の香り日記

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妻の四十九日も終わり遺品の整理をしていた。一息つこうと娘がキッチンへ向かうと、
「ママの結婚指輪を見つけたよ」と弾んだ声で言う。入院の前に外してそこへ置いてたのか。

手にすると、
『あなたへ。そしてユイへ』
突然ダイヤの部分が映写機のように光を放ち、壁にメッセージを映し出した。裏側にはダイヤルも埋め込まれている。

『これは私の日記です。時間のある時に見て。でも一番見て欲しいのは結婚式の時なの』

”カチリ” その日付に合わせた。隣に俺がいる。これは妻があの日に見た光景だ。式は滞りなく進み両親に感謝の手紙を読み花束を渡している。次の瞬間フワッと百合の香りが。

「あぁこの時の花束の香りだ。そうか、ママが伝えたかったのは人生で一番幸せだった日なんだな。この時、初めてお前がお腹の中でピクッと動いたって式の後言ってたぞ」

「嘘?聞いてないよ!」娘は初めて知った事実に妻とソックリな顔で泣いた。
ファンタジー
公開:18/12/06 11:27
更新:19/07/09 03:38
家族

ことのは もも。( 日本 関西 )

日本語が好き♡
18歳の頃から時々文章を書いています。
短い物語が好きです。
どれかひとつでも誰かの心に届きます様に☆
感想はいつでもお待ちしています!
宜しくお願い致します。

こちらでは2018年5月から書き始めて、2020年11月の時点で300作になりました。
これからもゆっくりですが、コツコツと書いていこうと思います(*^^*)

2019年 プチコン新生活優秀賞受賞
2020年 DJ MARUKOME読めるカレー大賞特別賞受賞
2021年 ベルモニー縁コンテスト 入選

カントー地方在住
 

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