物忘草(ものわすれぐさ)

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ドナウの岸に青く咲く、哀しい恋の物語。

中世の昔、恋人に頼まれ、水際の花を手折った騎士。足を踏み外して流れに呑まれる刹那、「私を忘れないで」と投げた。かの勿忘草(わすれなぐさ)の伝説に、秘められた続きがある。

その花のごとく、金髪碧眼の美しき乙女。幼馴染の牧童も、彼女に懸想していた。騎士の栄も財も、乙女の好む何一つ持たぬ牧童は、騎士と乙女の笑い合う様を横目に、独り過ごした。
騎士の形見の花を胸に抱き、涙に暮れる乙女。幾度言い聞かせても、心を鎖して悲嘆の淵を泳ぐ彼女を見かね、牧童は旅に出た。
東の果ての島に咲く、物忘草(ものわすれぐさ)。
その花を口にすれば、いかな憂いも忘れ去ると云う。
放浪と苦難の末、物忘草を手に入れた牧童は、国に帰り、牛乳に花を煎じて乙女に飲ませた。

季節が巡り、ドナウの岸を腕組み歩く、乙女と竪琴を携えた吟遊詩人。
草原で牛を追う牧童の葦笛が、遠く碧空に響いた。
ファンタジー
公開:18/12/06 22:39
更新:18/12/06 23:53
物忘草は正しくは、わすれぐさ 萱草(かんぞう)の古名です 花物語、和洋ミックスアレンジ

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